HARD BOILED CAFE

ハードボイルド探偵小説に関する本の紹介。チャンドラーの翻訳にまつわるエッセイ等。

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第29章(4)

<try to pull something>は「何か(悪いことを)企む」。 【訳文】 《「言わなければいけないことがある」私は言った。「昨夜はあんまり頭に来たんで、正気のさたとも思えないが、一人でそこを急襲してやろうと考えたんだ。ベイ・シティの二十三番とデスカ…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第29章(3)

<here's how it works>は「仕組みはこうだ」。 【訳文】 《ランドールは無表情に私を見つめた。彼のスプーンは空っぽのカップの中の空気をかき混ぜていた。私が手を伸ばすと、彼はポットを手で制した。「その先を聞かせてくれ」彼は言った。「連中は彼を使…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第29章(2)

<smooth shiny girls>は「練れた、派手な女」でいいのだろうか? 【訳文】 《「いいスーツを着ているな」 彼の顔がまた赤くなった。「このスーツの値段は二十七ドル五十セントだ」彼は噛みつくように言った。「なんとも感じやすい警官だな」私は言って、レ…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第29章(1)

ドア越しに相手に投げるのは、キスだけじゃない。 【訳文】 《パジャマ姿でベッドの脇に座りながら、起きようかと考えていたが、まだその気になれなかった。気分爽快とまではいえないが、思っていたよりましだ。サラリーマンだったら、と思うほど気分は悪く…