HARD BOILED CAFE

ハードボイルド探偵小説に関する本の紹介。チャンドラーの翻訳にまつわるエッセイ等。

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第32章(1)

< hull down>は「マスト上部だけを水平線から出して偵察する」戦術 【訳文】 《繁栄している街の割には安っぽい見かけの建物だった。聖書地帯(バイブル・ベルト)から抜け出してきたかのようだ。正面の芝生―今では大半が行儀芝だ―が通りに落ちないように…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第31章(2)

<out of one's hands>は「自分の管轄外で」 【訳文】 《彼は机越しにゆっくりと身を乗り出した。落ち着きのない細い指がトントンと机を叩いていた。ミセス・ジェシー・フロリアンの家の玄関の壁を叩いていたポインセチアのように。柔らかな銀髪はつやつや…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第31章(1)

<so much for>は「~はそんなところ」という意味。 【訳文】 《ピンクの頭とピンクの斑点を持つ艶のある黒い虫がよく磨かれたランドールの机の上をゆっくりと這い回り、まるで離陸のための風をテストするかのように、一対の触手を振り回した。持ちきれない…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第30章(3)

「隙間」などでなくドアは<it stayed open>の状態なのだ。 【訳文】 《彼は裏口のステップを二段上り、ドアの隙間に器用にナイフの刃を差し込み、フックを持ち上げた。それでポーチの網戸の中に入れた。そこは空き缶だらけで、いくつかの缶には蠅がいっぱ…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第30章(2)

<throw ~over someone’s head>は「頭に~をかぶせる」 【訳文】 《玄関ドアの郵便受けに何かが押し込まれる音だった。チラシだったかもしれない。だが、そうではなかった。足音は玄関から歩道に戻り、それから通り沿いに歩いていった。ランドールはまた窓…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第30章(1)

<just to give you an idea>は「ご参考までに申し上げると」 【訳文】 《詮索好きな婆さんは玄関ドアから一インチほど鼻を突き出し、早咲きの菫の匂いでも嗅ぐようにくんくんさせ、通りをくまなく見渡してから、白髪頭で肯いた。ランドールと私は帽子を取…