HARD BOILED CAFE

ハードボイルド探偵小説に関する本の紹介。チャンドラーの翻訳にまつわるエッセイ等。

2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『大いなる眠り』註解 第十六章(2)

《口裏を合わせておかなきゃいけないな?」私は言った。「たとえば、カーメンはここにいなかった。それがいちばん大事だ。彼女はここにいなかった。君が見たのは幻影だ」 「何と!」ブロディは鼻で笑った。「あんたがそうしろというのなら――」彼は片手の掌を…

『大いなる眠り』註解 第十六章(1)

《私は折り返されたフレンチウィンドウのところへ行き、上部の小さく割れたガラスを調べた。カーメンの銃から出た銃弾は殴ったみたいにガラスを砕いていた。穴を作ってはいなかった。漆喰に、目を凝らせばわかるくらい小さな穴があった。私はカーテンで割れ…

『大いなる眠り』註解 第十五章(2)

《私はブロディのところまで行き、彼の腹に自動拳銃を突きつけ、彼のサイド・ポケットの中のコルトに手を伸ばした。私は今では目にした銃をすべて手にしていた。それらをポケットの中に詰め込んで、片手を彼の方に出した。 「もらおうか」 彼はうなずき、唇…

『大いなる眠り』註解 第十五章(1)

《彼はそれが気に入らなかった。下唇は歯の下に引っ込み、眉根は下がり眉山が尖った。顔全体に警戒感が走り、狡く卑しくなった。 ブザーは歌いやまなかった。私もそれは気に入らなかった。もしかして訪問者がエディ・マーズと彼の部下だったら、私はここにい…