HARD BOILED CAFE

ハードボイルド探偵小説に関する本の紹介。チャンドラーの翻訳にまつわるエッセイ等。

2013-01-01から1年間の記事一覧

第43章

いつのまにかキャンディーが、飛び出しナイフを手にカウチのそばに立っていた。話を聞いていたのだろう。マーロウにそれまでの態度を詫びた。何も手を出すな、というマーロウの言葉にしたがい、ナイフをわたす。警察に連絡するべきだというスペンサーを制し…

第42章

マーロウは、スペンサーを横に乗せてアイドルヴァレーに向かう。スペンサーは終始無言だったが、サン・フェルナンド・ヴァレーの地表面を覆うスモッグに耐えかねて口を開く。“ What are they doing ― burning old truck tires? ”清水訳「いったい、どうしよ…

第41章

金曜日の朝、スペンサーからホテルのバーで会いたいと電話があったが、部屋で会うことにした。込み入った話になりそうだった。マーロウは、スペンサーに同道してウェイド邸を訪れ夫人に会いたいと告げた。渋るスペンサーに、マーロウは、警察が夫人を疑って…

第40章

この章のマーロウは、ほぼ電話でことを済ませている。スーウェル・エンディコットは不在。次にかけたのはメンディー・メネンデスだった。マーロウは、メネンデスからレノックスが負傷し、捕虜になったのは英国だったことを聞き出す。それと同時に風紀係の刑…

第39章

検死審問は不発に終わった。事件は自殺という形で幕を閉じた。オールズは、その幕引きに納得がいかず、ポッター老の関与を疑い、マーロウに毒づくが、思い直してオフィスを訪れ、自分の胸のうちを語る。彼は、夫人を疑っていたが、動機が見つからないのだっ…

第38章

署長の待合室にはキャンディーが坐っていた。署長室には帰り支度をしたピーターセン署長がいたが、マーロウには構わず牧場に帰っていった。代わりにマーロウを尋問したのはヘルナンデスという名の警部だった。見掛け倒しの署長とちがい、警部はなかなかした…

第37章

かつての同僚バーニー・オールズは、今では郡警察殺人課の課長補佐になっていた。タフだが、根は人のいい男で、マーロウは心を許している。頭の切れそうな刑事が同行していて実況検分の結果を課長補佐に報告する。自殺の気配が濃厚だが、血中アルコール濃度…

第36章

空き瓶を片付けようと書斎に入ったマーロウは、ウェイドが死んでいるのを発見する。お茶の用意をして居間に戻ったアイリーンは、マーロウの様子から異変に気づく。そして、しばらくして訪れた警官に、マーロウの方を見もせず「夫はこの人に撃たれた」と、言…

第35章

何か鬱屈することがあるのだろう。ウェイドは、また酒をあおりはじめた。用があれば呼ぶように言い置き、作家を書斎に残したままマーロウはパティオに出た。湖上ではサーフ・ボードをひっぱったモーターボートが轟音を上げていた。キャンディもコックもいな…

第34章

マーロウは車でウェイド邸に向かう。冒頭、乾ききった土地の夏の真昼の情景が描かれる。埃っぽい未舗装路、舞う粉塵にまみれた潅木、疲れきってまどろむ馬、地面に座り新聞紙から何かを食べるメキシコ人。うだるような暑さに人も動物も生気を失っている。そ…

第33章

一週間後、ハリウッド界隈はスモッグに悩まされていた。ただ、マーロウの家のあるローレル・キャニオンあたりは何の理由によるものかは知らないが、いつもよく晴れて、空気は澄んでいた。そんなある日、ロジャー・ウェイドから電話があり、ランチを共にする…

第32章

ハーラン・ポッター老に呼ばれたマーロウはリンダ・ローリングといっしょにアイドル・ヴァレーにあるローリング邸に向かう。そこはフランスの貴族が女優の妻のために建てた奇妙な建築物だった。マーロウは、そこでポッター氏の現代文明に対する論説を拝聴す…

第31章

マーロウは、自宅で宿酔の朝を迎えていた。誰にも経験があるだろうが、何をする気にもなれず無為に時間をすごしていた。テリ-のくれた金のことを思い出しながら、それをつかう気になれないことをとりとめもなく考えている。 “ How much loyalty can a dead …

第30章

【マーロウは翌朝早くに眼を覚ます。コーヒーを持ってきたキャンディーに皮肉を言われるが、昨日と打って変わって、からきし意気地がない。悪口への返答代わりに平手打を食らわすのがせいぜいだ。アイリーンはといえば、こちらも昨夜の出来事などまるっきり…

第29章

【銃声のした部屋に入ると、夫妻は拳銃を奪い合っているところだった。弾丸は天井に穴を開けただけで二人は無事だった。マーロウは、発砲を悪夢のせ いにするウェイドに、自殺を試みたが度胸がなかったのだろうと言い放つ。あまりの言葉に腹を立てたアイリー…

第28章

【眠りに落ちる前、ウェイドがマーロウに始末しくれと頼んだ、タイプライターに残された書きかけの原稿がそのまま引用されている。いかにも飲酒が度を越した作家が書きそうな自己憐憫の臭う愚痴っぽい文章だが、美しい妻に見捨てられた寂しさや、キャンディ…

第27章

【ウェイドを寝かしつけたマーロウは、彼がどうして怪我をしたのか階下にある書斎を調べる。訳はすぐ分かった。壁際に転がった金属製の屑籠に血がこびりついていた。酒に酔ったウェイドが椅子を倒して、下にあった屑籠の角で頭を切り、蹴っ飛ばした後、外に…

第26章

マーロウは、怪我をしたロジャーをキャンディの手を借りてベッドに運ぶ。キャンディは、夫人との関係を揶揄したことで、マーロウに痛い目に合わされる。気がついたロジャーは、マーロウに夫人の無事を確かめた後、睡眠薬を飲んで眠りにつく。非番のキャンデ…

第25章

一週間後の夜、ウェイドから「来てくれ」と電話があった。車を飛ばして駆けつけてみると、アイリーンは煙草を口にくわえ玄関口に立っていた。ウェイドは、近くの叢の陰で頭から血を流して倒れていた。アイリーンに電話で呼ばれてやってきたローリング医師は…

第24章

ロジャー・ウェイドの後からパーティーの席にもどったマーロウは、ローリング医師がウェイドに「妻に近づくな」と警告するところを目撃する。軽く相手をいなすウェイドの頬をローリング医師は手袋で打つ。ホストとして自分を抑制できるウェイドをマーロウは…

第23章

カクテル・パーティーに招待されたマーロウは、車でアイドル・ヴァレーにあるウェイド邸に向かう。使用人のキャンディに案内された部屋にはリンダ・ローリングとその夫の姿もあった。酒を飲むと自分を見失うロジャーの頼みごとというのは、本を仕上げるまで…

第22章

第22章の舞台はおなじみのバー、<ヴィクターズ>。テリーとの約束を果たすためにやってきたマーロウが、ここで出会うのがリンダ・ローリング。レッノクス夫人の姉で、ウェイド夫人の主治医ローリング医師の妻にあたる。ギムレットを飲みながら、互いの腹…