HARD BOILED CAFE

ハードボイルド探偵小説に関する本の紹介。チャンドラーの翻訳にまつわるエッセイ等。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第39章(3)

「毛皮が渦を巻」く? <with a swirl of~>は「~をふわりとなびかせて」 【訳文】 「俺がジェシー・フロリアンを殺したと考えた理由は何だ?」彼は不意に尋ねた。「首に残っていた指の痕の開き具合だ。君は女から何かを聞き出そうとしていた。そして、そ…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第39章(2)

<squeeze out of>は「(情報・自白)などを(人から)強引に引き出す」 【訳文】 彼は横ざまにテーブルの方に動いて銃を置くとオーバーコートを引き剥がすように脱いで一番上等の安楽椅子に腰を下ろした。椅子は軋んだが、どうにか持ちこたえた。ゆっくりと…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第39章(1)

<primed for ~>は「~の準備ができて(いる)」 【訳文】 ベイ・シティのグレイル家に電話を入れたのは十時頃だった。彼女を捕まえるには遅すぎるかと思ったが、そうでもなかった。メイドや執事相手に悪戦苦闘したあげく、やっと彼女の声を聞けた。快活な…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第38章(4)

<The things I do>は「俺もずいぶん忙しい人間らしい」だろうか? 【訳文】 彼はしばらくじっと坐っていた。それから身を乗り出して机越しに銃を私の方に押してよこした。「俺がやっているのは」彼はまるでその場に独りでいるみたいに物思いにふけった。「…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第38章(3)

<desk>が<table>に化けるわけ 【訳文】 ドアが開いて、もう一人が帰ってきた。メス・ジャケット姿のギャングっぽい口をきくあの男が一緒だった。私の顔を一目見たとたん、男の顔は牡蠣のように白くなった。「こいつは通していません」彼は唇の端を捲りあ…